三菱自動車 軽自動車の燃費計測データに不正

当社製車両の燃費試験における不正行為について(三菱自燃費試験不正会見)

記者会見や資料からまとめた簡単な経緯は以下の通り。

①次期デイズの開発が「三菱自からの供給」→「日産自動車での自社開発」で進めることで両社合意。
②日産自動車が自社で開発するにあたり、現行の車両にて燃費を計測。
③実データと届け出値の乖離が大きく、日産自動車から走行抵抗値をどう設定しているのかの問い合わせが三菱自動車にされる。
④走行抵抗値の過去データを確認すると、燃費に有利になるような走行抵抗値がシャシーダイナモに設定され、それにより届け出がされていることがわかった。
(走行抵抗:車両の空気抵抗やタイヤの転がり、慣性に影響する重量などをトータルで加味したもの)

[④に関する問題点]
1.走行抵抗の試験方法が、道路運送車両法で規定されている方法(JIS)と異なっている。ただし、試験方法が異なることで走行抵抗がどれだけ異なるかは調査中。
 →燃費の不正に直結するかは別です。法律上、惰行法で行うところ、三菱自が「高速惰行法」で行っていたとしても、得られるデータに差異が無いならば燃費の不正にはならないからです(ただし、法律上の規定と違う試験法で運用していることをどう扱うかは残る)
2.繰り返しの試験で得られた走行抵抗の値に対して、二乗平均の中央値を取るべきところ、二乗平均の下方値を取った。
 →こちらが燃費の不正に直結する問題点です。

⑤届け出値に不正があるため、以下の車種を販売停止。
三菱自動車:ekワゴン、ekスペース
日産自動車:デイズ、デイズルークス(三菱自動車からOEM供給)

⑥4/20記者会見

以上が経緯です。

燃費測定は国で決められた走行パターン(JC08モード)で走って測定しますが、テストコースなどで行うと環境等の外乱の影響を受けるため、シャシーダイナモという測定用のローラーや排ガス測定装置、冷却用のファンなどが整った設備で実施します。設備内で行うため、本来なら走行時に必ずかかるはずの走行抵抗がかからない状態になります。それだと当然正確な燃費データが得られませんので、シャシーダイナモで評価をするさいに、走行抵抗の値を入力する必要があるわけです。より実負荷に近づけるという目的です。

今回はその走行抵抗の値に不正があったということで、燃費に届け出値との乖離が出たわけですが、影響として今後考えられるのは、

・エコカー減税の区分変更の可能性
 →区分が変わると、その差分に対する補償が必要になります。あとは区分を変更するということがサービスキャンペーンや改善対策の対象になる可能性があります。リコールはあくまでも保安基準への適合で判断されるため、ウコン茶としてリコールにはならないと思いますが、サービスキャンペーンあるいは改善処置はされると思われます。減税区分のシールを外したり、付け替えるくらいの規模のキャンペーンかもしれませんが。

・軽以外の登録車への波及
 →これは上記で書いた④の問題点1の結果次第かと思います。惰行法と高速惰行法(米国向けではコチラが規定)で計測した走行抵抗に差分があった場合、燃費の不正になるため、是正が必要になるからです(逆に高速惰行法が走行抵抗が悪化する側だと、問題にはならないでしょうが)。記者会見上、「ミラージュ」「デリカD5」「アウトランダーPHEV」は「惰行法」で行っていたと話していたので、問題はそれ以外の車種になります。ウコン茶の所感的には、惰行法そのものが非常にシンプルな試験のため、測定結果に大きな差異が出るとは思えません。複数回行って、二乗平均を取りますしね。

今回の不正の件も含め、三菱はNMKVでの軽自動車開発から撤退するのではないかというのがウコン茶の推測です。今回の不正の調査がある程度進んだ段階で発表されるのではないでしょうか。次期デイズが日産での開発になった時点で、その方向性であったという気がしてならないのです。なので子会社NMKVは日産に吸収され、生産を委託で受けるか、最悪は水島製作所の売却か・・・

なぜそう考えるかというと、

・「軽」という日本ローカル規格に対応するだけの体力(製造)を維持できない
・スズキ、ダイハツ、ホンダの軽3強に勝てるだけの商品力が自社開発では得られないと判断している事実。軽用のエンジンが重荷と推測。だからこそ、次期デイズの開発の主が日産になったわけだし(記者会見で役員が話をしていた)、今回の不正の件もあり、今後新たなOEM供給は期待できない。
・日本の市場は今後も縮小傾向

三菱自動車の稼ぎ頭はアジアです。タイとかですね。今後もそちらに注力すると思いますので、OEM供給先が無くなるのであれば、軽から撤退する(生産の委託を受けるだけ、あるいは他銘からのOEM供給を受けるだけになる)ことは、今後も含めた経営資源の使い方として合理的な判断です。販売店から阿鼻叫喚が聞こえてきたとしても、他銘からOEM供給を受け、軽のラインナップを得ることで収めるという選択肢も取れますし。

シャシーダイナモの評価に関しては以下のサイトが詳しいです。

技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価

三菱自動車は国内じゃますます厳しくなるなぁ・・・